2020年03月09日

No 57 調布市立図書館見学報告(第5回)

6,図書館の職員=「専門家集団」
 運営の「民間委託問題」と対峙した経験の中で得られた確信  


 「文化会館たづくり」の建設計画の検討の中で、会館の運営体制をどうするかが大きな課題となりました。
 芸術・文化のホールやギャラリーと、中央図書館と、生涯学習センターの諸施設などを一体的に複合化する施設は、市役所の一部所で管理運営することは難しいことから、調布市は、「公益社団法人調布市文化・コミュニティ振興財団」を設立して、同財団を指定管理者とする契約を結ぶことにしました。
 その際、中央図書館の運営も指定管理者に委託するかどうかが検討されることになりました。
 その検討の中で、最大の問題は、調布市立図書館が築き上げてきたサービスレベルの高さを、指定管理者が同等に維持できるかと言う点でした。
 市民の中から、図書館の運営を指定管理者に委託することには反対の声が多く、指定管理者への委託に反対する市民運動が急速に盛り上がったことから、図書館は直営を継続することになったとのことでした。
 図書館を利用していた市民から、調布市立図書館の職員に対する信頼が厚かったことが分りますが、それは図書館の職員は圧倒的に司書が多く、専門家としての司書の集団であることを市民がよく知っていたし、そのことの値打ちを理解していたと言うことだったと考えられます。
 調布市立図書館にとって、職員集団=専門家集団こそ掛け替えのない財産と言えると思います。
 その後、宅配ボランティアから始まり、さらに館内ボランティアを加え、合わせて図書館ボランティアとして図書館を応援する市民が100人を超えているなど、市民とのつながりがますます強くなっている調布市立図書館は、指定管理者では真似の出来ない境地に立っているように思えます。

7、今後の課題 

 小池館長の想いとして語られたものと受け止めました。 
 ここまで創り上げてきた調布市立図書館のレベルを持続可能とするために、質的な強化を着実に進めて行くことが強調されていると思われます。

(1)若い職員の育成
 「専門家集団」が支えている調布市立図書館に相応しく、今後の課題の第1に「若い職員の育成」が掲げられることに本気度を感じます。

(2)10年間で17人の司書採用 
 職員を育てることについては、10年間単位の長期の構想が必要であることが、実践的課題として当たり前に考えて行く組織風土になっていることを感じさせられます。

(3)施設の老朽化対策 
 ・分館4館が築40年以上経過。
 ・分館5館が2階建て バリアーフリー化が不備 エレベーターが必要。
 10館の分館全体のレベルアップを着実に具体化する計画づくりを目標としていることが感じ取れます。

(4)今後の図書館ビジョン策定
 「”日本一“役立つ・満足できる図書館」以上のビジョンが考えられるものでしょうか。
 小池館長が漏らして下さったイメージも、何か目新しいことを考えようと言うことではなく、「”日本一”役立つ・満足出来る図書館」の一層の質的充実、レベルアップを考えておられるようでした。



 
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2020年03月05日

No 55 調布市立図書館見学報告(第4回)

5,調布市立図書館の「改革」の取り組みの数々! 
  “日本一”役立つ・満足できる図書館に!を目指して。


 何をもって「日本一」とするかの目標はいろいろ考えられますが、調布市立図書館は、
 「市民に役立つ、満足できること」を目標と定め、その実現を目指して頑張ってきました、と小池館長は語っておられました。
 私はこれまでに、来館者数で日本一を目指している図書館、市民1人当り貸出し冊数で日本一を大事にしている図書館などを見学させていただいて、それぞれ学ぶところがありましたが、調布市立図書館のこの目標こそ、公共図書館が目指すべきことではないかと感じ、感銘を受けました。
 過去には、貸出し冊数を一気に増やすことに集中的に取り組み、数年がかりで100万冊上積みすることに成功したこともあったそうです。
 しかし、1点突破ではなく、もっと総合的に役立ち、満足していただくことの大切さに目を向け、以下のようなさまざまな改革に取り組み、今日の調布市立図書館を築いてこられたことを誇りに思っておられ、自信を持っておられることを感じました。
 上尾の図書館の改革を考える上で参考にすべき点が多いと考えますが、膨大ですので要点のみ報告させていただきます。

*開館時間の延長
全館午前9時から開館を実現(上尾の分館は10時開館)。
 閉館時刻は、中央図書館は、全日午後8時30分まで延長(上尾は午後7時)。
 分館は午後5時閉館(上尾の分館も同じ)。
 これを実現するためには、正規職員のシフト制勤務の拡大が必要ですので、職員の意識改革が必要だったと考えられます。利用者のニーズに対応するため、指定管理者へ委託した他市の図書館に遅れを取らないためにも、最善を尽くす決意の表明と感じます。

*開館日の拡大、月曜開館/祝日開館。
 調布の中央図書館は、毎週月曜日休館から、第4月曜日とその翌日(祝日の代休分)だけ毎月2日休館へと削減(上尾の本館は毎週月曜休館、ただし祝日を除く)。

 分館は、毎週月曜日休館(祝日の場合は開館して翌日に休館)。上尾の分館も同様。

*貸出し冊数20冊
 1人への1度での貸出し冊数の上限を、全館合計で20冊まで増やしました。

*ブックポスト24時間利用 
 返却用のポストは、24時間利用可能にしました。

*不要図書リサイクル 
 寄贈された資料で必要なものは受け入れ、それ以外の資料、及び、図書館として不要となり除籍した資料で有効利用できるものを、リサイクル資料として利用者に差し上げています。平成30年度実績は、寄贈受付数5,088点。リサイクル数28,316点。

*近隣市との相互利用 
 京王線沿線7市図書館連携事業が平成20年4月からスタート。
 他市の市民で登録した人に対して、相互に書架にある図書を貸し出しています。
 調布市立図書館に利用登録している他市の市民数は7,485人、年間貸出し点数は32,678点。
 調布市民で他の6市の図書館に登録している人は4,697人、他市の図書の年間の利用点数は17,519点。
 7市の中で、調布市立図書館の貢献度が突出しています。

*ハンディキャップサービスコーナー増改築
 「すべての住民の学習権の保障」「いつでも、どこでも、だれでも利用できる図書館」を目標としている公共図書館として、視力、聴力が不自由な利用者への「音訳サ−ビス」「点訳サービス」「大活字本の提供」「宅配サービス」「子どもたちへの布の絵本・遊具の提供」、ウェブサイトなどを音声で読み上げさせるパソコンや拡大読書器の設置」など、さまざまな対応がなされています。
 そのためにハンディキャップサービス係長以下4人の正規職員が配置されていることに驚かされました。

*宅配サービス開始 
 ハンディキャップを持つ住民だけでなく、高齢化して歩くのが大変とか、病気や出産で入院中などの住民を対象に、平成13年から宅配サービスを開始しました。平成30年度の利用登録者数は202人です。
 配達するのは図書宅配協力員(登録している市民ボランティア52人・内分館での登録者が42人)で、最寄りの図書館から配達します。週に2回ほど交代で配達。職員も配達に参加しています。
 平成30年度は、年間延1,712回の配達で、合計11,171冊をお届けしています。

*分館職員2人体制 
 平成元年〜6年の間は、分館の職員は3人体制でしたが、平成7年に中央図書館が「文化会館たづくり」へ移転してからは、中央図書館に厚い体制を作るために、分館の職員体制は1.5人に圧縮しました。
 分館の管理職を2館に1人とか3館に1人としていました。
 平成10年になって、分館の正規職員を1館2人体制、合計20人に増やし、全館に管理職(係長及び主査)の配置を確立したのは平成16年のことでした。職員の育成が伴うためには、しっかり時間を掛けていることが窺えます。

*司書職採用 
 調布市では、図書館の職員を採用するに当たって司書の資格を持っている人を司書として採用しています。
 市役所の他の部署へ異動しても、司書の資格が役立つ仕事はほとんどありませんので、他部署への異動は基本的にありません。
 他の部署からの異動を受け入れることもありません。
 図書館の職員は、館長をはじめとして、専門職として、退職するまで図書館で働き続けることになり、図書館で働くことに働きがい、生きがいを持つ職員が多い集団となっています。正規職員でも女性が多数派とのことでした。
 小池館長さんが、調布市立図書館の職員たちは、指定管理者にはまねの出来ない仕事をしているとプライドを持っていますと語っておられたことが印象に残りました。

*嘱託員研修制度の充実
 調布市立図書館では、正規職員以外に専門嘱託員150人前後が働いています。短時間勤務のパートタイマーではなく、週3日勤務、1日は7時間労働という契約が基本となっています。
 従って、この労働での収入だけでは自立した生活は困難であり、女性(主婦)が圧倒的に多いとのことでした。
 一般の正規職員と同じような仕事を担っていますので、嘱託員と呼ばれています。
 従って、研修制度も充実させ、力を付けてもらうための努力をしています。

*図書費確保 
 図書資料の充実こそ、図書館にとっては生命線です。
 市の財政と図書館費の項で紹介した通り、調布市の図書費は70,293千円で、上尾市の34,653千円の2倍強になっています。
 人口数の差は少ないので、市民1人当りの図書費も、調布は約300円、上尾は約150円で2倍の格差があり、蔵書(資料)点数の総数でも、調布は140万点、上尾は60万点弱ですので、2.3倍の格差があります。
 地方自治体の財政が厳しくなってきている中で、調布市では、平成26年度から30年度まで、毎年当初予算は6,891万円を維持してきた上に立って、31年度は、消費税率が2%上がる分をカバーするために、7,029万円にアップしてもらう折衝に努力して実現したとのことでした。

*交換便1日2便(午前、午後) 
 分館10館へ、毎日2便、注文を受けた図書の届けと、返却図書の回収のための交換便のトラックが運行されています。
 
*電算システム更新(インターネット対応) 
 電算システムは平成3年度に導入し、以来5年ごとにシステムの入れ替えを行っており、平成28年度のシステム更新で、最新のシステムが導入されているとのことです。
 自動化貸出し機は平成16年度から導入されており、分館へも配備済みです。

*分館移転改築(深大寺分館) 
 分館の老朽化が進んでいるなか、3番目に古かった深大寺分館が耐震検査で不合格となり、近隣に私有地があったことから、新築移転を急ぐことになりました。
 複合施設化も検討されましたが、保育園は近くにあるため、図書館単館計画となり、都内では珍しい平屋の図書館が実現することになった恵まれた分館です。現在7年目。

*市報、調布FM放送の活用 
 調布エフエム放送ラジオ局が文化会館たづくりの3階にありますので、毎週土曜日午後4時40分〜50分に「図書館事業案内」の放送に活用しています。

*利用者懇談会 
 平成13年から、毎年1〜2回、図書館利用者懇談会を開催しています。
 平成30年11月に開催された懇談会の参加者数は19人、内容は、テーマを決めて、図書館について知ってほしいことを説明することや、事業報告・計画の説明、利用者からの質問や要望などですが、議事録をみると参加者からの発言は活発です。
 深大寺分館の建替え移転事業の折には、地域の利用者・住民との意見交換会を4回も開催して、出された意見を生かす努力がされています。

*図書館協議会の意見(分館10館維持) 
 図書館協議会の委員の定数は15人以内となっていますが、現在委嘱されているのは11人。
 任期は2年。平成30年度は4回の定例会を開催しています。第1回〜第3回まで3回にわたって「調布市立図書館の今後の在り方」を論議しました。
 その中で「気軽に使える身近な図書館=分館10館体制を維持すること」が大切な価値とされたそうです。

*指定管理者制度への対応(直営への条例改正) 
 旧調布市図書館条例は、設置と名称及び位置しか決めていないシンプルなものでした。(上尾市の図書館設置条例は今も同じです)。
 管理・運営などは規則で定めており、その改廃は教育委員会で出来ることになっていました。
 調布市では、管理・運営など大事なことは条例で定めることにした方が良いと考え、平成18年に抜本的に条例を改定しました。それによって、図書館は調布市教育委員会が管理すると定められました。
 もし、将来、管理を民間などへ委託する場合は、条例を改正しなければならないこと、つまり、市議会の承認が必要な事項となりました。

*調布市立図書館の基本方針及び運営方針 
 「調布市立図書館の基本方針及び運営方針」については、先に4項で全文を紹介している通りです。

*図書館ボランティア 
宅配ボランティアについては、先に紹介した通りですが、それとは別に、館内ボランティアが60人活動しています。一部は宅配と両方で活動している人もいます。
 館内ボランティアでは、中央図書館が41人、分館には19人と、中央図書館で活動する人が断然多くなっています。週1回、2時間を原則として、書架整理を中心に、図書の修理、映画資料の整理などの活動をしています。
 文字通り、市民が協働する図書館運営が実践されています。図書館を応援したいと考える市民が多くいることの一端が示されていると思われます。

*地域情報化事業 
  調布市地域情報化基本計画(平成15年度)に基づき、図書館における地域情報化事業として具体化し、地域情報の収集と市民への地域情報の提供に取り組んでいます。
 平成17年度から、市民協力員を募集し、職員と一緒に「市民の手によるまちの資料情報館」協力者会を結成して、継続的に情報収集活動を進めています。
 集めた情報を整理し、「市民の手によるまちの資料情報館」として図書館のホームページを通じて公開しています。「映画のまち調布」「調布の文学」「調布の石仏・野仏」「調布の交通」「深大寺そば」等、まちのイメージアップに役立っています。
 作業の応援のボランティアから一歩進んで、市民協力員は、図書館の活動への市民の参画と言えるレベルと思っています。 






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2020年02月26日

No 50 調布市立図書館の「実践の3本柱」と「基本方針」

3,調布市立図書館の実践の3本の柱 

(1)第一の柱 図書館網(ネットワーク) 
 
 中央図書館+分館10館 (この点は「概況」の中の「分館」でも紹介した通り)
 ・「どこでも」歩いて10分で図書館を利用出来る
 ・800mに1つ
 ・人口2万人に1つ
 ・小学校区2つに一つ(調布市立小学校数は20校、中学校は8校)

(2)第二の柱 児童サービス 

 ・図書館活動を支える大きな力になるのは子どもたちである。
 ・図書館利用者の半数は子どもたちである。
 ・子どもたちへの徹底したサービスは,明日の良き読書人を創造する。
   (おはなし会は、ボランティアではなく、職員がやる。)
 ・選書(本を選ぶことと提供することとをセットで取り組む)
  域の中で自主的な文庫=ミニ図書館を維持していく必要がなくなってきたものと考え
  られます)
 ・学校との協力事業(全館が分担して近隣の小学校2校または1校を支援) 

(3)第三の柱 集会行事活動 

 “市民に対する読書の啓発と図書館利用の促進を図ると同時に、読書によって生まれた
  学習意欲と,市民の文化的要求を育てる文化創造の拠点となる“
 ・『中小都市における公共図書館の運営』(通称『中小レポート』)
   1963年(昭和38年)日本図書館協会より刊行された中小公共図書館運営の指針で
   ある。
 ・『ユネスコ公共図書館宣言』(1972年)を参考に。  
   「公共図書館は、民主主義に支えられ、人びとが民主主義を支える教育を受ける
   施設であり、生涯にわたって学ぶことができる施設」と定義され、世界平和のた
   めにも、すべての国で公共図書館の整備充実を図ることを呼び掛ける宣言をして
   います。
 ・講座・講演会の開催
 ・読書会の開催
 ・調布ブッククラブ(現『アカデミー愛とぴあ』)=生涯学習団体が対応。
  地域の読書会17を含む俳句・短歌・随筆・小説など創作サークル、研究サークル、
  合計40サークル、登録会員431人を擁する。
  事務局は、文化会館たづくり10階 調布市立図書館読書推進室

4,調布市立図書館の基本方針及び運営方針 

(一)基本方針 

 調布市立図書館は,分館網の整備・充実をすすめることにより、いつでも、どこでも、
だれでも気軽に利用できる市民の書斎であり続けるとともに、地域に根ざした市民文化
の創造に寄与するため、市民の参加と協同を得て、積極的な図書館活動を展開する。

(二)運営方針 

(1) 市民の豊かな読書生活を保障し、調査・研究を支援する機能をさらに
  発展させるとともに、新しい情報通信技術の活用により、市民のための
   「地域の情報拠点」として、市民に役立つ図書館をめざす。
(2) 子どもに良い読書環境を提供するために、全館に質の高い図書を揃え、
  図書館内外のあらゆる機会をとらえて、積極的な児童サービスを展開す
  る。
(3) 図書館を利用するうえで、困難な条件にある高齢者や障がい者などを
   支援するとともに、一層の情報バリアフリー化をすすめる。
(4) 文化創造の拠点として積極的に図書館活動を展開し、市民の身近なと 
ころで文化事業を実施する。また、読書団体との連携により、読書推進
事業に取り組む。 
(5)  図書館活動に市民の意向を反映するために、図書館協議会や利用者の
   懇談会などでの意見を尊重するとともに、図書館ボランティアの充実を
   図るなど、市民との協働による図書館運営を推進する。
(6)  図書館サービスの発展を保障するために、職員に対する継続的研修を
   行い、司書業務に係る専門的資質の向上に努める。
                        平成17年1月27日

 この『基本方針』と『運営方針』は、平成17年(2005年)1月27日に発表されて以来15年間掲げられ続けてきました。
 掲げられただけではなく、営々と実践の努力が積み重ねられてきたことが感じられます。
 調布市立図書館で働く職員にとって、ミッション(使命)の宣言とも言うべき文書となっていたものと考えられます。
 こうした努力をしてきた職員集団がいて、それを応援し、協働する市民がいたからこそ、今日の調布市立図書館があるのだと思われます。





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