(5)街の特徴
調布市は,世田谷区に隣接しており、新宿から京王線で15分という便利さから、ベッドタウンとして,早くから団地や住宅が作られ始めた地域でした。
上尾市もベッドタウンとして急速に発展して来た点で似ていますが、近年違いが目立ってきています。
調布では、古くなった団地やマンションの建て替え、再開発が進み始め、若い人の流入が持続しています。
赤ちゃんが増えて,保育所や小学校の増設が急ぎの課題になっています。
調布市にはキューピーをはじめ、食品加工業の工場はありますが、大型の工業団地はありません。
日活、カドカワ大映の2つの映画撮影所があり、映画の街として知られています。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)はじめ国の研究所が3つ,電気通信大学、桐朋学園、白百合女子大学、慈恵会医科大学などがあり、学園研究都市の側面もあります。
サッカーチムFC東京のホームスタジアムとなっている「味の素スタジアム」と武蔵野の森総合スポーツプラザがあり、サッカーやラグビーの街でもあります。
調布市では、若い人にとって魅力のある街づくりが進んでいることを感じます。
上尾市は、かつて「子育てするなら上尾」と言われた時期がありました。
また、県が国体開催のために建設した陸上競技場と体育館など運動公園、その後にも水上公園や武道館などが県によって上尾に作られた恩恵を受けて「スポーツの街上尾」と言われるようになりました。
他方、文化・芸術の施設は、まったく乏しいままで過ぎてきました。
かつては、自動車工業や自転車製造、金属工業などの大型工場と領家工業団地などがあり、製造業が活発な街でもありました。
時が過ぎて、全国的に少子高齢化が進んでいる中、上尾市でも大型の住宅団地やニュータウンは住民の高齢化が進み、世帯人口は減少、空き家が増加しています。
県立のスポーツ施設は老朽化が進み,オリンピック会場となる県の新しい大型のスポーツ施設は熊谷市に作られています。
製造業は,工場の撤退や生産規模の縮小が目立っています。
JR高崎線が湘南新宿ラインで新宿副都心へ直通となったのに続いて、東京―上野ラインができたことで東京駅、さらには湘南まで直通となり、通勤の条件は大幅に改善されましたが、それを生かした魅力ある街づくりは立ち後れています。
調布市のような街があることを参考にして、上尾市でも成熟した街、持続可能な街を作って行くこと、そしてそのために役に立つ図書館の在り方を考えることが大切になっていると痛感しています。
2, 調布市立図書館の概況、上尾市との比較
(1)中央図書館
開設期
調布市立中央図書館が最初に開設されたのは1966年でした。
上尾市は、旧上尾市議会議場跡で上尾市図書館としてささやかに発足したのが1971年、現在の上尾市立図書館本館が開設されたのは1981年のことでした。
拡充整備
調布市では、1995年、調布駅前の「文化会館たづくり」の中に、芸術文化施設と生涯学習施設と中央図書館との複合施設を開設。(市制40周年記念事業)
日活とカドカワ大映の2社の映画撮影所があり、関連の企業も多い映画文化の街ということもあって、芸術文化の公共施設整備に力が入っており、人口20万人の市立の文化会館としては際だって大型の施設となっています。
蔵書と資料合わせて140万点、(中央図書館で90万点、分館10館で50万点)
中央図書館の蔵書・資料では、映画関連の資料収集を特徴としています。
貸出し点数は、年間260万点、(中央図書館で110万点、分館10館で150万点)
トータルでの市民1人当り貸出し点数は11点と高い水準を維持しています。
上尾市では、2018年、市民の反対を押し切って、郊外の上平地区に中央図書館を含む複合施設の建設を進めようとしましたが、市長と議長が汚職で逮捕され辞職したため、工事が中止されました。
市長が交代して、計画は見直し、本館は移転しないことになりました。
それから2年が過ぎ、現在、「図書館の在り方」を検討中です。
調布市では40周年の年に、調布駅前と言う理想的な立地での拡充整備を果たしていたのに比べ、上尾市ではいまだ「図書館の在り方」を検討している段階であり、本館の施設計画については、イメージすら示されていません。
現本館は開設してから39年経っており、老朽化が著しい上、狭い、開架書架が少ない、蔵書が少ない、居場所としての機能が足りない、司書が配置されておらず、レファレンスサービスが劣るなど基本的な機能での課題をかかえています。
現状の実績は以下の通りです。
蔵書と資料合わせて60万点(本館で34万点、分館8館で26万点)
貸出し点数は、年間122万点(本館で63万点、分館8館で59万点)
トータルでの市民1人当り貸出し点数は、5.34点(調布の半分弱です)
(2)分館(上尾では公民館図書室も含めて)
各地域への分館配置推進期
調布市では、1969年から1982年までの13年間で、10の分館を開設して、中央図書館とで、図書館ネットワークを完成させています。
原則として、「どこでも」歩いて10分で図書館を利用できる、半径800m圏内に1館、人口2万人に1館、二つの小学校区に1館、が明確な目標になっているため、立地が良く選ばれています。
複合施設の相手は、保育園が4館、児童館が1館、小学校が1館、地域福祉センターが1館と多彩です。図書館のみの単独館は3館だけです。
床面積は、300u〜600uと、最低でも300uが確保されています。
蔵書冊数は31,000〜50,000冊、新聞は最低でも7紙揃えています。
正規職員が2人ずつ配置されており、2人とも司書です。
上尾市では、1985年から1993年までの8年間で6館の分館(分室を含め)の開設を進めたことは積極的と評価できますが、その後は12年間飛んで、2005年に1館、2006年1館を追加して8つの分館(室)とし、本館を含めての図書館ネットワークを整えました。合計21年間かかっています。
配置に調布のような原則がうかがえず、偏りもあり、空白地が残されています。
公民館図書室が3館、市役所の支所との複合施設が3館、小学校との複合施設が1館、市民活動支援センターなどとの複合施設が1館となっています。
床面積は、公民館図書室はすべて200u未満、分館でも瓦葺分館は164u、
最大規模の大石分館でも479u、その他の3館は300u前後です。
蔵書は、2万冊台が5館、3万冊台が2館、5万冊台は大石分館のみです。
新聞が置かれていないところもあり、あっても1〜3紙とわずかです。
正規職員は、分館には1人もいません。すべて業務委託先のパートさんに依存しており、司書はいません。
調布市と比較して最も大きく格差を感じるのは、分館の貸出し点数で、調布市の150万点に対して上尾市は59万点ですので、約3分の1となっています。
調布市では、分館での貸出し点数合計が、中央図書館の貸出し数より大きく上回っているのに対して、上尾市では分館での貸出し点数合計が、本館の貸出し点数の76%にとどまっていることは、分館の蔵書の質量や、職員のサービスレベルが満足されていないことの表れと考えられます。
分館の拡充整備
調布市では、初期に開設した分館の改修や、新築移転が進められています。
2002年には、つつじヶ丘分館を廃止して調和分館へと新築移転しています。
2011年には、深大寺分館を近隣へ拡張移転しています。
現在、最も古い国領分館などから、拡張移転計画の検討が進められています。
上尾市では、2008年に大石公民館図書室を廃止して、現在の大石分館が開設された以後は、新たな分館の増設や、既存分館の拡張移転など一切取り組まれていません。
2019年に、平日は午後からしか開館していなかった5館を午前10時から開館するように改めたことは、長年の市民からの要望がようやくかなえられた貴重な一歩でした。

特に市長のリーダーシップが、今後の浮沈を決める決定的な鍵だと思います。
ご自分に知恵があれば結構ですが、ないとすれば職員や民間から有能な人を見出す「目利き」であることが絶対に必要で、そうした方々による大改造をしないと、行き着く先はかちかち山の泥船になることが目に見えています。
ひろみ様やお仲間が、そうした提言を市長に行ってもよいのではーーー。