「政治倫理条例」制定の検討が再開されたことは喜ばしいことですが、市民に知らせ、意見を聴く場も設けてほしい。
政治倫理条例制定特別委員会」が設置されるに至った経緯
@議長と市長の同時逮捕事件
2017年10月30日、現職の島村市長と田中議長が同時に逮捕されて上尾市の名が全国に知れわたった事件から2年半が過ぎました。
事件の内容は市の業務の入札に関わって議長と市長が業者から金を受け取っていた収賄でしたが、長期間にわたって繰り返されて、職員の中にも知られていたのに、内部で止めさせることができずに過ぎてきたことは組織風土の問題として深刻なものでした。
議会の中に、2017年11月9日に「調査特別委員会」が設けられ、2018年12月21日に「調査特別委員会報告書」を可決しましたが、その内容は、特別委員長の井上茂議員自身が納得していないという不十分なものでした。
A「第三者調査委員会」からの提言
他方、出直し市長選挙で当選した畠山市長のもとで、2018年5月24日に「第三者調査委員会」が設置され、2019年3月18日に「調査報告書」が提出されました。
その中で「再発防止策の提言」がなされていますが、その冒頭に、議会の「調査特別委員会報告書」について、「政治倫理条例の制定等に言及するものではなく、業者と政治家との癒着の問題や議会の監視機能の欠如等に対する抜本的な対策において、不十分な感は否めない」と指摘されました。
「再発防止策」として10項目が提示され内、「入札制度の改善」「政治倫理条例の制定」「職員倫理条例の制定」「市民による監視の強化」などがとりわけ大切と受け止めました。
この4つの内、3つは不十分さを残しつつも進められてきていますが、まだ残されているのが「政治倫理条例の制定」です。
当初、議会では、第三者調査委員会の提言した「政治倫理条例」の内容に沿ってではなく、「議員倫理条例」の検討を主張する意見もあり、「議会改革特別委員会」として検討を始めていました。
しかし、6月定例会の頃には、第三者調査委員会の提言を受け止めて「政治倫理条例を」検討するべきという意見も強まっていました。
そこへ、第2の事件が明らかとなりました。きっかけは一市民からの告発でした。
Bブロック塀事件が明るみに
2019年6月20日、市議会の6月定例会で、井上茂議員が一般質問の中で取り挙げて、新井元市長の所有地内のブロック塀工事を市費で行ったことに小林議長が関与していたこと、本来は一つの工事なのに7つに分割して随意契約とすることで契約管理課のチェックを受けずに隠蔽していたことなどを明らかにしました。
こうしたことは市の職員が絡んで協力していたからこそできたことで、畠山市長の管理責任も問われることです。
議会での議論のなかで、野本議員がヤジで妨害し、バカヤローと罵った事件も起きました。
ブロック塀事件は、出直し市長選挙で畠山市長が当選を果たして、「公正な政治、公正な行政」を進めようとしてスタートして間もない2018年8月から関係者の相談が始まっていましたので、議会に設けられた「調査特別委員会」が@の事件の問題点を検討し、再発防止策を検討しようとしていながら、議員自身の不正を防止するための対策についてはなかなか合意が進まずにいたことと時期が重なっていたのです。
C市議会100条調査特別委員会の設置と証人喚問
メディアもしばしば取り上げ、市民からの怒りの声も高まる中で、小林議員は議長職を辞任し、新井元市長はブロック塀工事費相当額を返金するなど、事実上不正を認める行動を取ったことを受けて、7月30日に全員協議会が開催されました。
その場で、「上尾政策フォーラム」と「日本共産党上尾市議員団」から、臨時議会の開催を求める提案がされ、8月9日に臨時議会の開催が実現されることになりました。
4会派の代表の合意による決議案に基づき、真相究明と告発を検討するために、上尾市議会史上初めての議員全員による「100条調査特別委員会」を設置することになりました。
以来、12月6日まで11回の委員会が開催され、2人からの参考人招致、8人の証人喚問が行われ、新井元市長、小林元議長、畠山市長の3人への「告発」が全会一致で可決されました。
この間は、100条調査特別委員会に集中的に取り組むこととなり、議会改革特別委員会は議員の任期が12月末で終了することから、政治倫理条例の制定の取り組みは中止し、市議会議員選挙で選ばれた新議員に託すことになりました。
D市議会議員選挙が行われ、議員は大幅に交代し、若返り、結果として議会の構成も大きく変わりました。
詳細は、本ブログの昨年末、12月4日の記事「上尾市議選の結果を受け止めて」、及び、本年1月10日の記事「上尾市議会令和2年第1回臨時会のサプライズ」をご覧ください。
市議選の結果は、市議会の変化を求める市民の意思が反映したものと受け止めることが妥当と思われます。
選挙が終った後に開催された議会の12月定例会は旧議員によって行われたため、新議員の活動が本格的に始まったのは3月定例会からでした。
ところが、新型コロナウイルス感染症の脅威が高まってきた中、一般質問は中止されることになり、折角張り切って質問を準備された新議員の発言を聞くことはできずに終りました。
E3月定例会の閉会日の3月23日、「政治倫理条例制定特別委員会」の設置が決定全会一致で決議されました。
即日第1回特別委員会が開催され、委員会の下に「調整会議」が設けられて始動しました。
この「調整会議」は会派の代表者、及び、会派所属の議員の中からの委員(主に旧議会の議会改革特別委員だった方々)によって構成され、継続性があって効率的に進め易い利点はありますが、新鮮な新人が1人も入っていないこと、無会派の4人の議員は参加できないことなど、選挙で示された民意を担う議員の参加による新たな発想を生かすことはむずかしい体制となっているように感じます。
しかも、4月7日に「緊急事態宣言」が発せられた中、「調整会議」も予定通りの集中的な開催は困難となり、当初目標とした「6月定例会」への提案は断念しなければならなくなっています。
論議を尽くせていない条例を作ることは議員間の不信を深めることや、将来に禍根を残すことになりかねません。
9月定例会への提案を目指して十分に議論し、基本的には全議員が一致できる内容で「政治倫理条例」を制定されることを期待したいと思います。
この願いは、私個人の想いであるだけではなく、この2年半の上尾の市政と議会の動向と経緯を見てきた多くの市民に共通の願いではないでしょうか。
5月15日、第7回調整会議が開催されました。
主な議題は、住民の調査請求に当たっての要件について
論点は、「一人でも請求できる」とするか、住民の50分の1以上の連名とするか、その中間とするかでした。
「一人でも請求できる」と主張したのは日本共産党市議団、住民の50分の1(3800人)以上とすべきは「彩の会」、その中間に、住民の200分の1(約1000人以上とすべきが公明党、一人では少なすぎるので一定数を慎重に検討すべきが「政策フォーラム市民の声あげお」と4つに別れました。
「彩の会」の意見は、住民投票条例の制定請求並の高いハードルです。
これでは市民の請求はほとんど不可能になりますので,住民の調査請求制度を作る意味がありません。
この議論を聞いていて違和感を覚えたのは、市民の権利に関する要件であるにもかかわらず、市民からの意見を聴くことの必要については一切話し合われなかったことでした。
一人でもできることにすれば、濫用される恐れがあるという意見が多いのですが、本当にそうなのでしょうか。
住民監査請求の場合は、一人でも請求できるようになっていますが、濫用されて困ったという事例は挙げられていません。
先行している他市で、濫用に困った事例はほとんどないようです。
もし少しはあったとしても、濫用を防止する手立ては他にも考えられるのではないでしょうか。
濫用めいた請求が出された場合のチェック機能は、上尾市にも整ってきていると思っています。
職員倫理条例の制定の中で、内部告発の相談を受けるために弁護士資格者をはじめとした職員数人による窓口部署ができました。連携してその部署に,公正な立場で住民からの調査請求の1次チェックの協力を得ることは可能ではないでしょうか。
この条項については慎重に検討することにはなりましたが、この問題は住民の権利に関わる問題です。議会が審議するだけではなく、市民にも知らせ、意見を聴く機会をぜひ設けてほしいものと思います。
第三者調査委員会の調査報告でも強調されたように、公正な市政・議会を創って行くためには,市民の日々の監視、が必要です。それを日々尊重することを、執行部にも議会のみなさんにも望みます。2年半前からの悔しい出来事を、もう繰り返してほしくありません。
2020年05月16日
No 96 「政治倫理条例」の制定に望むこと
posted by ひろみ at 12:16| Comment(2)
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